
現在、過去の情報システムの失敗事例を辿るジャーニーをしています。情報システムの失敗といえば、日経コンピュータ(現・日経BP)の人気連載「動かないコンピュータ」が有名です。その集大成である50件の失敗事例をまとめた『動かないコンピューター――情報システムに見る失敗の研究』(日経コンピュータ、2002年)を読み返しました。今から24年前の本です。
80〜90年代は、毎号届く日経コンピュータが楽しみで、この「動かないコンピュータ」の記事に釘付けになっていました。当時はあちこちで情報システムの失敗が起きており、少しでも参考にしようと真剣に読んでいた記憶があります。いつの間にか読まなくなってしまいましたが、いったいいつ頃からでしょうか。
今回読み返して気になったのは、システムの失敗そのものとは別に、情報システム担当者が抱える問題がいたるところで登場することでした。整理すると、共通する5つの原因が浮かび上がります。
1. 経営陣・現場とのコミュニケーション不足(専門用語の多用)
情報システム部門はつい専門用語を使いがちで、経営者や利用部門には話が伝わりにくくなります。その結果、「システムで何を実現したいか」をお互いにうまく共有できないという問題が生じます。
2. 経営トップを動かす「政治力」の不足
経営トップが外部のシステムコンサルタントの言葉に惑わされている場面でも、それを正したり、逆にコンサルタントをうまく活用して経営トップを動かすような「政治力」がシステム部門に欠けている――プロとしての責任を果たせていないという厳しい指摘が随所に見られます。
3. 技術知識不足による外部業者への「丸投げ」
新しい技術(当時はパソコンなど)に詳しくないシステム担当者が、プロジェクトの主体性を持てないまま、設計や技術的な判断を外部のソフト開発会社に丸投げしてしまうケースがあります。仕様が曖昧なまま開発が進み、後になって大きなトラブルを招く原因となっています。
4. 担当者の独断による仕様決定と現場とのミスマッチ
業務知識や調整力が不足した担当者が、現場の意見を聞かずに単独でシステム仕様を決めてしまうケースです。出来上がったシステムが現場の想定と大きく食い違い、社内で強い反発を招く事態につながっています。
5. 他業務との兼任による時間不足と運用準備の遅れ
仕入れ業務など他の仕事と掛け持ちしている担当者が、多忙のあまり「商品マスターの登録(全商品へのコード割り振り)」といった基本的な準備作業が追いつかなくなることがあります。その結果、システムを導入しても手作業が残り、かえって業務効率が悪化してしまう事例が報告されています。
24年前の本に、こうした「青い鳥」のようなスキルセットを担当者に求める構造が既に見えていたとすれば、それが間違いだったのかもしれませんね。
2026年3月13日


