2024年4月1日
一般社団法人 ひとり情シス協会
技術グループ
毎年、新たなひとり情シスが誕生しています。この記事に辿り着いた方もひとり情シスに任命され、これからの仕事に不安を覚えているものでは思います。そして、ひとり情シスに関連する情報を探しているのではないでしょうか?しかし、ネット上には事実とは異なる憶測で書かれ、必要以上に不安を煽り自社サービスを販売する目的の記事が氾濫しています。ここでは、一般社団法人ひとり情シス協会による調査データを元に、現役ひとり情シスによる技術グループメンバーでの考察を報告致します。初めてのひとり情シスの方にもわかりやすい説明を心掛けました。まずは、正しい情報をご自身の目でご確認ください。今、日本ではIT人材が極度に不足し、その傾向はこれからも続くでしょう。不安な状態でひとり情シスを始めても、その後、様々なIT関連分野で活躍する方々も多いです。会社や個人にとっても意味ある挑戦ですので、是非、取り組んで頂ければと考えています。
1. ひとり情シスが注目された理由
1-1ひとり情シスが脚光を浴びた理由
「ひとり情シス」とは、文字通り1人で大きな会社に存在する情報システム部門’(情シス) に匹敵する仕事を行うことです。この「ひとり情シス」が大きな脚光を浴びたのは2017年のことです。現在、「伝説のひとり情シス」と呼ばれる一般社団法人ひとり情シス協会の技術顧問である黒田光洋(ペンネーム:成瀬雅光)が 日経 BP 社の日経XTECHにて「10人のIT部門が消滅~ひとり情シス顛末記」の連載を開始して、一人で200台のサーバーを管理しシステム運用の利便性を向上させてきたドキュメンタリーが報告され、読者に大きな驚愕を与えました。
また、同じ2017年に、ひとり情シス協会 事務局の清水 博が、それまで噂レベルで伝聞されていたひとり情シスの実態を解明し「ひとり情シス実態調査」を報告しました。従業員100〜1000名の中堅企業であっても約30%のひとり情シス企業が存在することが報告され、多くのニュースメディアで報告されました。
1-2 100名を超える中堅企業でのひとり情シス
この2017年の発表で大きな驚愕を持ってニュースが広がった理由としては、100名を超える企業、300名、500名や700名に至っても一人のシステム管理者が存在しているということで、中堅企業の規模感であっても一人でシステムを担当している企業の多さが注目されました。
多くの中堅企業で伝説のひとり情シスと同レベルな「スーパー」なひとり情シスとして活躍している方が多かったです。「スーパーひとり情シス」とは、自身でプログラミングも出来、サーバーの仮想環境構築、PCの管理運用、また経営層とのシステム投資の方向性の確認や、ユーザー部門とのコミュニケーション、パートナーと関係構築など八面六臂のスキルを持っていました。
1-3 コロナ禍で大きく変化したひとり情シス
ひとり情シスが再度脚光を浴びたのはコロナ感染症が発生した2020年のことです。中堅中小企業の中ではITやデジタル化を積極的に進めている企業もありますが、必要最低限のIT投資に留まっている企業も少なくありません。
ITに積極的ではない企業は「パソコンが詳しい」という理由だけで社内のシステム担当者になることが多かったのですが、コロナ感染症発生以降は、パソコンのみならず様々なIT関連の要求を受けることになりました。外出自粛に伴うリモートワーク環境の構築、オフィスへ立ち寄れない場合のBCPやバックアップ環境構築、緊急に配布したノートパソコンのキッティングや資産管理などに忙殺されることになりました。
1-4 100名以下の中小企業で激増する一人目のひとり情シス
コロナ感染症発生以降で大きく変化したひとり情シスは、100名以下の中小企業です。一般的には100名以下の企業で専任の情シスがいることは極めて珍しいことです。IT担当者がいても、兼任が多いのが現状です。ほとんどの場合は明確に担当者を決めておらず、手の空いている人が対応するという状態でした。しかし、コロナ感染症発生以降、IT担当者を置く必要性を感じ、100名以下の企業では1人目のひとり情シスが任命されることになりました。そのため、十分なIT知識がないまま業務をスタートしているという現状です。
2. ひとり情シスとは?
2-1 ひとり情シスの語源 - 「ひとり生産方式」
1980年代後半には、バブル景気の勢いを受け、多くの日系大手企業は海外に進出しました。同じタイミングで、ベルトコンベア生産方式からひとり生産方式に変化していました。1人の作業者が製品の全工程を担当することです。多能工とも呼ばれました。
海外法人を立ち上げるには、IT環境の構築は必須です。そのため、大手企業の情報システム部から現地へスタッフが赴任されます。ほとんどの場合が、単身で派遣されることがほとんどです。現地の社員とのコミュニケーションも難しい中、ひとりであらゆるITに関連することを対応しました。その方々が、ひとり生産方式を真似て、ひとりで情シスから派遣されたことを文字通り「ひとり情シス」と自ら名乗ることが多かったです。
第1回:「ひとり情シス」の始まりはいつ?--名前の由来と発生時期を考える
2-2 「ひとり」より「情シス」が難しい
情報システムという言葉が日本に広がったのは、1960年代にコンピューターが広く普及し始めた頃です。この情報システムという言葉は、業務の範囲が千差万別です。業界や業種、企業の規模、デジタル活用の度合いなどによって異なります。ネジのJIS規格のようなものはありません。多少の異なりはある経理などの汎用性とも異なるものです。
ひとりで職務を担当する難しさに加えて、情シス業務への期待値とスキルギャップが様々な誤解を産みやすいです。社内の情シスに期待することを上層部や社内のユーザーと認識しておくことはとても需要です。ここが確認できていないとひとり情シスが業務過多になってしまい負担増となります。ひとり情シス大学では詳細に情シスの守備範囲の変遷について説明しています。
2-3 ひとり情シスが任命される理由
コロナ感染症発生以降に急速に一人目のひとり情シスが任命されましたが、出身部署は様々です。①PCだけが詳しいから知らぬ間に②技術全般を理解している管理職だから③何となく総務・管理部門管轄とされたから④数字を扱うので経理部門管轄とされたから⑤社長命令でデジタル化を加速するからなど、経験やスキルが異なるバックグランドを持ちます。部門経験や持っている知識などの違いで目指すべき情シス像や対象範囲が異なります。
2-4 ひとり情シスの守備範囲
自社の情シスに対応すべき範囲とひとり情シスの経験やスキルなどを加味して、ひとり情シスの守備範囲を定めていきます。ひとり情シス大学では、5つの守備範囲のタイプを定めて説明しています。幸運にもITに詳しい社員が担当する「完全セルフ型」から「パートナー活用型」などの類型タイプがあります。比較的多いのが、パソコン回りなど自身で出来ることは対応するが、社内の基幹システム(会計や生産管理)などサーバー回りは外部パートナーに依頼するケースが多いです。ひとりで全てやることは一部のスーパーなひとり情シス以外には不可能ですので、どこまで対応可能か否かを経営層と事前に確認しておくことが重要です。
3. 調査結果から見えるひとり情シスの傾向
一般社団法人ひとり情シス協会が実施した「中小企業IT投資動向調査」「ひとり情シス実態調査」の速報値である「2024年度 – 10大トピックス」を報告します。現在のひとり情シスの傾向です。ひとり情シスの方は、自社の状況が調査結果と比較してみてください。
3-1 ひとり情シス企業増員せず
情シス要員が一人以下が中小企業で88%、中堅企業で38%と状況は前年度と大きく変わらず。採用計画はあるものの、技術職、企画職、営業職などのビジネスに直結する職種が優先され、情シスの人員増企業は、わずか中小企業で7%、中堅企業で10%に留まる。
3-2 情シスの人手不足感は上昇を続ける
コロナ禍が終焉し、様々なプロジェクトが動き出している。中小企業で61%、中堅企業で56%と半数以上の企業が人手不足感を感じている。基幹システムの更改やITプラットフォームの見直し、ネットワーク・セキュリティ対策など検討項目が増加している。主に、経営層や幹部社員とユーザーに挟まれ調整作業が増大して多忙を極める。
3-3 ジュニアひとり情シスが増加。スキル不足に苦労。
IT経験3年未のジュニアひとり情シスは、中小企業で36%、中堅企業で20%。特に中小企業では、一人目のひとり情シスを任命する企業がコロナ発生以降増加し、中小企業で92%、中堅企業で78%がスキル不足を感じ、業務対応に苦慮している。
3-4兼務型ひとり情シスが「兼務疲れ」
中小企業の76%が兼務型ひとり情シス。92%が人手不足を感じ、ユーザー層の低リテラシーに苦慮している。兼務はITだけに留まらず、コンプライアンスやハラスメント対策、BCPなど幾つも業務を兼務している。
3-5 パートナーへの依頼を検討する企業の増加
情シス増員計画が無く、人手不足感が増加しているので、外部パ―トナーに委託することの検討を始めている。経験の浅いひとり情シスや兼務のひとり情シスが多いことから、サーバーやネットワークなどの技術的に難易度の高い部分の外部依頼に注目している。
3-6 IT予算が計上される企業がまだ少数派
予算計画にIT支出が計上されている企業は、中小企業で23%、中堅企業で36%。IT関連の支出がサブスクリプション化していくことに戸惑いを感じている。利益が出そうな時に支出する体質は、これからのIT投資の計画が立てづらい。
3-7 IT支出の不足感が増加
ソリューション導入には規模感が必要で100名以下企業は一人当たりの支出が増加する傾向がある。100名以下が顕著で36%の企業が予算の不足感中で支出計画を検討する必要があり。
3-8 DXの効果を実感し始める
デジタルトランスフォーメーション(DX)で財務的(売上・利益)な貢献があったと回答した企業は、中小企業で11%、中堅企業で15%。効果を実感するまでは容易ではないが、小さい成功体験を積み重ね着実に増加をしている。
3-9 クラウドインフラ移行への意欲
中堅中小企業では、クラウド利用には一部の企業を除き慎重であったが、BCPや管理の手間などを考慮し中小企業で53%、中堅企業で46%とクラウドへの移行の意欲が急速に高まる。特にアプリケーション関連はSaaS前提で検討する企業が多い。
3-10 セキュリティ対策に苦慮する
セキュリティ事故のヒヤリハットは微減であるが、まだまだ経営層のセキュリティ対策の理解が中小企業で53%、中堅企業で46%と投資については理解が得られにくい。また、ユーザー層のセキュリティ対策への理解を得るためのリテラシー支援活動にも時間を取られる。
4. ひとり情シス課題の対策を考える
現在のひとり情シスが向き合う現状とその背景や対応策について報告します。解答があるものばかりではないですが、経営層や上司が経験された時代の認識も様々変化していますので、是非、会話する機会を設定して欲しいです。
4-1 セキュリティ対策が後手後手になる
企業によって異なりますが、中堅中小企業のセキュリティ対策は、投資対効果の判断が難しいため、経営層には理解しづらいものです。ひとり情シス協会が実施した「日米デジタルエンゲル係数比較調査」では、セキュリティ対策の「必要性を感じていない」と回答し、35.2%の企業が投資ゼロという現実です。投資対効果が見えにくいのも原因の一つです。
セキュリティ対策は投資する金額が増えるごとに、安心感を増すものですが、実際には全ての企業で対応できるものではありません。しかし、セキュリティ対策はお金をかけることだけが対策ではありません。経営層や従業員のセキュリティリスクに対する意識の風土形成がとても重要です。「ソフトウェアの自動更新を有効化する」「パスワード運用の要素認証化」「社外への端末の持ち出しを禁止し、必要な場合は申請制に」など0円で出来る対策も多く、これらのことは基本中の基本です。このことが風土形成につながっていきます。是非、この点から試してみてください。ひとり情シス大学では、投資する金額別にセキュリティ対策について説明しています。
また、ひとり情シス協会では日本経済新聞に中小企業のセキュリティリスクの警鐘を鳴らし経営層に理解してもらう活動をしています。
「社長、ウイルススキャンを!」 中小企業IT担当座談会(日本経済新聞)
4-2 ひとり情シスは不適合購買が多い
ITや情シス経験がまだ浅い頃には、様々なことを試行錯誤で進めるものです。現在、ベテランになっている情シスの方々も最初は皆同じ状態です。しかし、ひとり情シスには、購買において、機種やソリューション選定を行う重責が当初から発生します。ひとり情シス協会の調査によると「過去、製品・ソリューション購入に失敗した経験はありますか?」との問に、35%の回答者が経験あるとしています。3人にひとりは購買に失敗しています。突然、辞めたひとり情シスの後には、購入したが使われない機器やソリューションの残骸が出てきたりします。
以前は、中堅中小企業へのIT機器の販売は、地場の販売店(ITリセーラー)から購入することが多かったので、自社ニーズに適合しているか第三者の観点で提案をもらえたりしましたが、昨今は少し状況が変わりました。コロナ禍以降、インサイドセールス(電話による営業活動)や営業代行業が増加することにより、多くの営業電話がかかってくるとよく話されます。一般的にインサイドセールスは、自社製品やサービスのみを売り込みます。プロダクトをプッシュするプロダクトセールスのタイプです。自社の要求仕様が明確になっていて、それに応じた製品やソリューションの比較をするのであればいいですが、ゴリ押しされる可能性もあります。また担当者がすぐに変更することや、担当者不在になることも多いので、この点は気に留めておいてください。また、予算が豊富にあるように伝わると、必要以上の機能を持つ製品・ソリューションを提案されるケースがあります。車は必要だけど軽自動車レベルの利用を計画していたにも関わらず、スポーツカーを提案されるケースも無いことはありませんので、あくまでも自主的な意識を常に持ち、機種選定の意思決定をする必要があります。
4-3 ひとり情シスの28%相談相手がいない
ひとり情シスは、相談相手がいないと思われています。ひとり情シスに限らず他の業務分野でも、自分と同じ課題に悩み、自分よりも詳しくアドバイスをもらえる相談相手を見つけることは誰しも望んでいることです。しかしながら、そのような相談相手と巡り合うことは極めて珍しいことです。しかも最近では、コンプライアンス意識の強まりとともに、社内の機密情報を公にしない方が多いです。そのため、社内のIT課題など話しづらくなっています。事実、初見同志のひとり情シスでは、なかなか深い話ができなくなっています。
それでは、大手企業の情報システムでは相談が自由に行えるかというと必ずしもそのような職場ばかりではありません。大手企業の情シスは一人一人の仕事が徹底的に細分化されているので、その他の人が担当している業務の知見がなかったりします。また、各人の競争でもありますので、ノウハウをオープンにされる方ばかりではありません。ひとり情シスの方が、大きな情シス部門に行くと戸惑う点です。
ひとり情シス協会の調査によると「特に相談者はいない」と回答された方は28%です。相談や情報交換できる相手は、お互いのメリットがなければ関係は成り立ちません。出会いを大切にして丁寧にお付き合いすることを心掛けてください。人脈を広げることは、いろいろな方に支えてもらうひとり情シスの重要なスキルセットです。
4-4 相談相手の4割は地域販売店
ひとり情シス協会の調査によると、相談先の1位が「地域販売店」、2位が「会計・税務事務所」、3位が「金融機関」です。中堅中小企業は地域への貢献が大きいものですので、地域に根差したパートナーが選ばれています。
1位の「地域販売店」は、41%のひとり情シスが相談先として欠くことのできないパートナーです。中小企業のひとり情シスは、不得意な分野があることや、得意だとしても対応工数が足りないことが多いです。その為、何か問題あるとついつい声の掛けやすい地域販売店の営業担当者に頼ってしまいます。しかし、人手不足の問題は全ての会社で起きている問題ですので、販売店側も同じです。昔は、地域販売店の営業担当者が様々な情報を収集し無償で提供することも多かったですが、今は時代が変化してきて対応範囲も限られてきます。しかも、過度な無償なサービスの要求はカスタマーハラスメントにもなります。
地域販売店のパートナー選びは、社長の人脈の紹介や地元で評判の高いところが有力候補になるかと思います。お互い良好な関係が継続できる点が重要です。ITのスキル・人材不足などの自社の実情を話して、どこまで対応いただけるのか確認しましょう。一社からIT関連の機器やソリューションを購入することにより、販売の履歴なども残る可能性は十分ありますので、どのようなサポートが可能かどうかを相談してみてください。20年程前は、相見積り(あいみつもり)を取り合い、良い条件を引き出すことも一般的でしたが、今は時代も変化しています。手がかかる顧客と判断されると、提案されないことやサポート・取引を降りることも起きていますので、細心の注意が必要です。
4-5 簡単な仕事はアウトソーシングしないことが一般的
ひとり情シス協会の調査によると「外部パートナーに委託したい内容」の第一位がサーバーサポートです。約5割の企業が必要性を感じています。第二位がネットワーク管理です。中小企業には自由自在にサーバーを構築できる人材がいることは稀ですし、ネットワークに知見の高い人も少ないです。やはり、技術的に難しい部分から外部にサポートしている傾向が調査に表れています。
資金的に余裕があれば、様々なサポートを外部に依頼することもできますが、現実的には難しいことです。しかも、社内にITリテラシー(IT全般に関する理解能力)を少しずつ蓄積させていくことも重要です。そのため、自身でできそうな点はなるべくトライをして、現時点で対応できない部分を外部にサポートをお願いするということが一般的です。その為、現在、PCサポート委託する企業は少数派です。PCのキッティングなどは、様々な便利なツールが増えてきて自身でのアップデイト作業も楽になったと話すひとり情シスも多いです。
4-6 黒田論文より「ひとり情シスはやり方を教えて欲しい」
現在、ひとり情シス協会の技術顧問を務める黒田光洋は、10人のIT部門が消滅し一人で200台のサーバーを管理し、システム開発やパソコンのサポートなどもこなした「伝説のひとり情シス」です。黒田さんが学会で講演した論文がありますので、ひとり情シスの方はご一読されることをお勧めします。
これは、ひとり情シス向けに販売される方にも参考になる情報です。黒田さんは次のように述べています。「最近は『一人情シス』を前提に支援するサービスも出てきました。と言っても、代わりにやってあげますというものがほとんどなのです。しかし,『一人情シス』には、全部お願いしますというお金はありません。やり方を教えて欲しいのです。自分の努力で人件費を節約して,努力では解決できない機材の調達とかソフトの購入,こういったことに回して,自動化,効率化をしていきたいのです。」ひとり情シスの気持ちを代弁しています。提供側のITベンダー様もご理解頂けると助かります。
4-7 ひとり情シスを不安視する広告の見方
ネット上の企業広告には、「ひとり情シスの抱える課題と対策を背景を解説」「ひとり情シスが抱えるリスクとは?対策方法を紹介」「ひとり情シスとは?問題点や企業が抱えるリスクや解決方法をご紹介」などの記事が氾濫しています。現役のひとり情シスがとても嫌悪感を抱いています。
ひとり情シス協会の調査では、過半数を超える方がひとり情シスの仕事に満足しています。多くの人に感謝される職種もそれほど多くありませんので、誇りを持っている方が多いです。しかながら、企業広告には、事実と異なり必要以上に不安を煽る言葉が並んでいます。これはFUD(ファド)に該当します。FUD(英: Fear, Uncertainty and Doubt)は、直訳すると「恐怖、不安、疑念」)のことで、販売、マーケティングの誤謬の戦術の一種のことです。Wikipediaによると「FUDとは一般に、大衆が信じていることに反するような情報を広めることで、大衆の認識に影響を与えようとする戦略的試みである。例えば、個々の企業が競合他社の製品について悪い印象と憶測を与えるためにFUDを利用する」とあり、日本に進出している外資系のグローバル企業は決して使いませんし、日本企業でもグローバルに展開する企業では使われないことがほとんどです。
内容も不安を煽るだけで、事実を伝える実態調査や現役ひとり情シスのコメントなどはなく、「コタツ記事」がほとんどです。コタツ記事とは、自ら実態調査を行ったり取材対象者に直接取材したりすることなく、インターネットのウェブサイトなどのメディアで知り得た情報のみを基にライターが作成する記事のことです。これらの記事には役立つ内容もなく、不安を散々煽った後には自社サービスをプロダクトアウトに説明しているのみです。これから自社のお客様にもなる可能性もあるには関わらず、ひとり情シスの不安を煽る企業姿勢には疑問です。しかも記事も古いままで継続支援していると思えません。その会社をインターネットで検索して、広告やプレスリリース、自社ホームページ、ブログ以外でどのように評価されメディア報道されているかを調べてみましょう。ほとんど何も無いのが実態です。ご心配の場合はお問い合わせください。
4-8 情シス支援サービスには要注意
コロナ禍に、経験の浅いひとり情シスの方々からの依頼で、ひとり情シス協会の技術グループが「情シス支援サービス」の評価を致しました。「情シス支援サービス」は、コロナ禍で情シスの業務負荷が高まり増加したものです。5社ほどのサービスを調査しましたが、いずれも月額数万円からスタートするもので、購入しやすそうに見えます。
しかし、よく考えてみるとわかると思うのですが、情シス業務限らず、会計業務、法務業務、営業業務、マーケティング業務など月額数万円で納得あるサービスはありません。ましてや、極度の人材不足であるIT分野では考えにくいことです。その為、派遣や対応されるエンジニアの経験が浅いことや質の低さなども報告されています。そんなにおいしい話はありませんね。しかも「情シス支援サービス」に、自社の追加要望を加えていくと金額が膨らみます。そうなると派遣社員を依頼した方が良いとか、増員すべきなどの考えに至ることも多くなります。最初から要求仕様が定まらないものです。検討していくに従い要求が明確になってきますので、各社からサービスの情報を取りつつ、まず自社で必要な人員リソースの範囲をじっくり検討することが重要です。
4-9 悲惨なひとり情シスは存在するのか?
「悲惨なひとり情シス」と語られることが多いです。本年度の調査では、約11%に現状のひとり情シスの仕事に「満足していない」との結果が判明しました。業務の貢献、待遇などの評価に満足がいかないという状態です。しかし、大手企業の調査でも「満足していない」社員の割合が14~15 %に該当します。また、最近の3年未満の新卒では35%が「満足していない」などの結果が出ています。自身の人生の目標や希望、やりたい仕事などから納得できない人が増えています。その反面、「満足している」ひとり情シスは、52%も存在します。頼りにされ、感謝されることも多いので、満足度が高い職種であるともいえます。
4-10 ひとり情シス大学を開催する理由
当初、ひとり情シスが脚光を浴びたときは、ひとりで多くの業務をこなし、システムを開発し、自動化の環境を構築するなど、テクノロジーで武装されたスーパーなひとり情シスがテーマでした。しかし、コロナ感染症発生以降、状況は大きく変わりました。今まで、IT担当者が不在の企業で多くの一人目のひとり情シスが誕生しています。ました。ロナ感染症発生から4年経過しても、一人目のひとり情シスは増加を続けています。IT経験が全く無い方も多いです。そのため、勉強していくことは必要ですが、どこから勉強していいかもわかりません。
一人目のひとり情シスが増加している傾向を感じ、ひとり情シス協会の技術グループがひとり情シス大学1日コースのカリキュラムを開発しました。会社員では何日も会社を離れるわけにはいきませんので1日に集約しました。2024年で3年目の開催になります。同じ境遇の方も参加していますので、対象者はご参加のご検討をお願いします。2024年度のひとり情シス大学の開催スケジュールです。
4-11 ひとり情シス協会のセカンドオピニオンサービス
製品・ソリューションの選定については、自社の要求仕様、ユーザーのIT活用度、予算など様々な状況を判断し、意思決定の起案をひとり情シスが考える必要があります。その時、最終決定の前にどうしても第三者の意見を聞きたいということもあるかと思います。
まず、提案してくれる販売店様等から情報を得て、自身で第一の意思(ファーストオピニオン)として考えることが重要です。まずは、自社の状況の中でベストな選択を追求してください。そして、セカンドオピニオンが必要であれば、現在は、評価レポートを作成した対象製品・ソリューションについての現役のひとり情シスであるひとり情シス協会の技術委員が対応をしています。
「セカンドオピニオン_受付フォーム Survey」より現在の環境や前提条件、今後の方針と機種設定の決定など詳細にご連絡頂けましたら、一週間を目途にご返信いたします。また、評価レポート対象製品・ソリューションでなくても、ひとり情シス協会には、2000社を超える協力企業があります。お答えできることもあると思いますので、お問い合わせください。
ひとり情シスに関連する連載も多くの記事がありますので、ご関心ありましたらご覧ください。
注意事項
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